カヌー

カヌー

旅行先でカヌーの体験ツアーに参加して、楽しんだことがある人もいるのではないでしょうか。また、前回のリオデジャネイロオリンピックでは、日本カヌー界初の銅メダルを獲得し、一躍注目を集める競技のひとつにもなりました。ただ、「競技としてのカヌー」といわれると、よくわからない方も多いのではないでしょうか。今回は、そんなカヌー競技を中心に、カヌーについてご紹介しましょう。

1. カヌーって何?

手こぎボートは、いわゆるボートとカヌーの二つに分類されます。どう違うのでしょう。
ボートは進行方向が後方で、櫂(かい)が艇に固定されていています。この櫂のことをオールと呼びます。一方、カヌーはこぎ手が進行方向に向き、櫂をこぎ手が直接持ち、艇に固定されていません。また、櫂のことをパドルといいます。こぎ手が艇の進行方向に向いていることが、カヌーの最大の特徴といえます。
さらにそのカヌーも、一般的にはカナディアン(カヌー)とカヤックの2種類に分類されます。
カナディアンは、いわゆる甲板がなく、片端に水掻き(ブレード)の付いたパドルが用いられます。一方、カヤックは、こぎ手が座るコックピット以外は甲板で覆われていて、両端に水掻きの付いたパドルが用いられます。
なお、「カヌー」とは、カリブ海周辺の先住民族が使う「小型舟艇」という言葉が転じて一般的に使用されるようになったといわれています。

2. 競技としてのカヌーの歴史

カヌーは、古くから人々の移動手段として、または狩猟や輸送の道具として、海洋、湖沼、河川などで用いられ、その歴史は、はるか6千年前のメソポタミア文明の遺跡に、その痕跡が残されているともいわれています。
スポーツとしてのカヌーは、19世紀中頃イギリスで芽生えました。1850年代には、近代的な甲板のあるカヤックの原型がテムズ川で見られるようになりましたが、これを普及させたのが、スコットランド出身の弁護士で冒険家のジョン・マクレガーといわれています。彼は、レースやツーリングといったスポーツとしての側面からも近代カヌーの普及・発展に寄与し、その甲斐あって、カヌーが1924年のパリ大会でオリンピックの公開競技として実施され、1936年の第11回ベルリン大会より正式種目として採用されることとなりました。日本でも1964年の東京オリンピックを機に普及と強化の両面で大きく躍進し、競技人口を増やしてきています。

3. カヌー競技

カヌーの競技は、大別すると、(1)直線のタイムを競う「スプリント」と、(2)不規則に設置された、2本のポールからなるゲートを順番に通過していく「スラローム」の2種目で競われます。

  1. 「スプリント」
    流れのない川の下流域や湖などで行われ、直線に設けられたコースをどれだけ速くゴールできるかで勝敗が決まります。コースには幅9メートルのレーンが9つあり、自分のレーンからはみ出すと失格になります。1人乗りのシングル、2人乗りのペア、4人乗りのフォアと3つの区分があり、また、競う距離も200、500、1000メートルなど細かく分かれています。
    流れのない直線コースを、選手の技量とチームワークを頼りとして純粋にゴールタイムを競うので、白熱した競技が楽しめます。
  2. 「スラローム」
    スラローム艇と呼ばれる全長3.5メートル以上、幅60センチ以上の舟を使います。この大きな舟を巧みに操作して、急流に設置された18個~25個のゲートに触れないように通過し、ゴールタイムを競う種目です。ゲートには「ダウンゲート」と呼ばれる上流から下流に通過するゲートと、下流から上流に向けて漕ぎ上がる「アップゲート」があり、通過する際にゲートのポールにパドルや船体、身体が触れると減点対象となり、その都度ゴールタイムに2秒が加算されていきます。また、ゲートを通過しなかった場合、1ゲートにつき50秒のペナルティーが加算されます。
    激流のなか、自由自在に艇を操るテクニックが見所ですが、「アップゲート」では、流れに逆らって漕ぎ上がるパワーも試されます。こうした選手のパワーやバランス感覚、敏捷性に加え、刻々と変化する川の流れや波の状況を見極める判断力も注目ポイントです。

4. レジャーとしてのカヌー

カヌーは、競技としても魅力的ですが、釣りやキャンプ、渓流下り、ツーリングなどレクリエーションとしても広く愛好されています。
レクリエーションとしてのカヌーの魅力は、自然と一体化したなかで自由に艇を操ることができる点にあります。また、水面に近い目線から景色を楽しむことで、自然の素晴らしさを再発見することもできるでしょう。

協力:公益社団法人日本カヌー連盟
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