フェンシング
フェンシングは「FENCE(囲い・守る)」という言葉を語源に持ち、名誉やルールを守ることを重んじる礼儀正しいスポーツです。今回は、国際舞台での日本人選手の活躍が目覚ましいこの競技について、豆知識をお届けします。
1. フェンシングの歴史
フェンシングは中世ヨーロッパの騎士道に端を発する剣技です。その後、時代の流れによって実際の戦(いくさ)において使われることはなくなりましたが、その繊細かつスピーディなテクニックに魅了される人が多く、競技化されました。
18世紀に金網のマスクが開発されたことにより安全性が高まり、ヨーロッパで盛んに競技会が開かれることとなります。当初は競技規則が国ごとにまちまちであったためトラブルもありましたが、1914年にIOC国際会議において統一的な競技規則が制定され、公正さが確保されました。
日本では、昭和7年にフランス留学から帰国した岩倉具清が学生に教えたことから広まりました。
2. 三つの種目と特徴
フェンシングには3種類の武器があり、そのまま種目名となっています。
まず一つ目はフルーレです。フルーレは「攻撃権」を尊重する競技で、「突き」のみによって得点が入ります。「攻撃権」とは、先に攻撃を仕掛けた方に攻撃の権利が発生し、相手はそれを防御することになります。防御に成功した場合は、防御した側に「攻撃権」が移り、反撃することができる、というルールです。「攻撃権」を持たない側の選手が有効面を突いても得点にはなりません。得点になる攻撃の有効面は胴体のみとなっています。「攻撃権」というルールにより、攻撃-防御-反撃の素早い応酬が見どころです。剣は全長110cm以下、重さは500g以下と非常に軽量です。
二つ目はエペです。エペはフルーレと同様に「突き」のみが得点となりますが、全身が有効面となります。また、「攻撃権」の概念がなく、両者同時に突いた場合は両者に点が入る、わかりやすい競技となっています。有効面が広いため、スピーディかつ変化に富んだ展開となるのが特徴です。剣は全長110cm以下、重さは770g以下のものを用います。
三つ目はサーブルです。サーブルは、ほかの2種目と異なり、「突き」のほかに「斬り」が有効となります。有効面は上半身です。フルーレと同様に「攻撃権」があります。「斬り」があることでダイナミックな攻防が見られます。剣は全長105cm以下、重さ500g以下のものを用います。
3. 競技のルール
競技はピストと呼ばれる幅1.5m~2.0m、全長14mの細長い試合場で行われます。
現在の試合においては、電気審判器が使用されています。例えば、フルーレにおいては、有効面である胴体にメタルジャケットを着用して試合を行い、剣先のボタンで有効面を突くと色ランプ、無効面では白ランプが点灯する仕組みとなっています。
個人戦のトーナメントは、最大9分間(3分間ずつの3ラウンドに区分し、各ラウンド間に1分間の小休止を挟む)、15本先取で行われます。時間切れの場合は、その時点で得点の多い選手の勝ちとなります。
団体戦は、4人で構成されたチームの中の3人による総当たり戦(3分間9試合のリレー方式)で、45本先取で行われます。最後の9試合目で45本に達しない場合は、試合終了時の得点が多いチームの勝ちとなります。
4. 主要な大会
国内外でさまざまな大会が開かれているほか、毎年、世界選手権が開催されています。また、オリンピックにおいては、1896年にアテネで開催された第1回大会以降、毎回正式種目となっています。実は、一度も外れることなく夏季オリンピックの正式種目となっている競技は、陸上競技・競泳・体操競技・フェンシングの4競技のみです。
近年は、日本人選手が世界選手権やオリンピックなどの国際舞台で好成績を収めています。2012年のロンドンオリンピックにおいて、男子フルーレ団体で銀メダルを獲得したことも記憶に新しく、今後のさらなる活躍が期待されます。
協力:公益社団法人 日本フェンシング協会
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