いちじく(無花果)
いちじくは、花を咲かせずに実を結ぶことから漢字で「無花果」と書きますが、外から見えないだけで花は果肉の中にあります。果実を切ると見える、赤いつぶつぶがたくさんつまっているところが花です。今回は、そんないちじくについての豆知識をお届けします。
1. いちじくの歴史
旧約聖書では、「アダムとイブは自分たちが裸であることに気づいて、いちじくの葉で作った腰ミノを身につけた。」と記されています。
原産地はアラビア南部とされ、6,000年以上前から栽培が始まっていたといわれてます。
地中海沿岸でも古くから知られ、古代ローマでは代表的な果物の一つであり、甘味源としても重要であったようです。
日本には江戸時代初期、ペルシャ(現在のイラン)から中国を経て、長崎に伝来しました。
2. 生産地
国内では、愛知県が第1位で、福岡県が第2位、和歌山県、兵庫県、宮城県などが続いています(平成25年栽培面積)。
国際連合食糧農業機関によれば、海外では、トルコが1位で、エジプトが2位、アルジェリアが3位で、モロッコ、イランが続きます(平成24年)。また、乾燥いちじくとしても流通しており、トルコ産、イラン産のものは、特に有名です。
3. 国内のいちじくの種類
国内では、8月から10月にかけて旬を迎えるいちじくですが、主な品種に次のものがあります。
- 桝井(ますい)ドーフィン
明治42年に広島の桝井光次郎氏がアメリカから日本に持ち帰った品種で、樹が管理しやすく、また、収量が多い品種です。いちじくの中では果実の皮が硬めで、輸送性にも優れているということで、日本の市場の約8割を占めるようになった代表的ないちじくです。ほどよい甘味とさっぱりとした風味があり、生食のほかジャムなどにもされます。8月~10月ごろに収穫されます。 - 蓬莱柿(ほうらいし)
江戸時代初期に中国から伝わったといわれ、西日本を中心に定着し、長く栽培されてきたことから、明治時代にアメリカから導入された桝井ドーフィンと区別する意味でこの蓬莱柿のことを在来種として「日本いちじく」と呼んだりします。適度な甘味とほのかな酸味があり上品な味わいです。ただ、お尻の部分が裂けやすく日持ちが悪いため、関東方面ではあまり出回りませんでした。 - とよみつひめ
福岡県で生まれ、平成18年に品種登録されたいちじくです。その最大の特徴は甘さで、糖度が17度にもなる甘味の強い品種です。果皮は赤紫色の鮮やかな色合い、果肉は肉厚で、豊かな果汁となめらかな食感を味わうことができます。旬は8月中旬ごろからです。
4. いちじくの栄養価
いちじくにはカリウムやペクチン、フィシンといった成分が含まれています。カリウムは、体内に取り込まれ過ぎた余分な塩分を排出する働きが期待でき、むくみ予防や高血圧症の方によいとされています。また、ペクチンをはじめとした食物繊維は、便秘の改善が期待できます。フィシンはタンパク質分解酵素で、食後などに食べると消化を助けてくれます。さらに、抗酸化作用があるポリフェノールも含まれているので、美肌や老化防止にも効果的ともいわれています。
また、葉の切り口などから出る白い液体にもタンパク質分解酵素が含まれていて、イボ取りなどの民間療法に使われています。
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