ゴールボール
ゴールボールを見て、目隠しをしているのに、どうしてボールを止めたりできるのだろうと、不思議に思った人も多いでしょう。スポーツは観客の応援が力になることもありますが、ゴールボールは競技 中に音を立てたり歓声を上げることは禁止され、選手は時速50kmにもなるボールを体で受けるため、「静寂の中の格闘技」ともいわれています。そんなゴールボールの魅力について紹介します。
1 ゴールボールの始まりと日本での取り組み
ゴールボールは元々、第二次世界大戦で目を損傷した傷痍軍人のリハビリプログラムの一つでした。その後、1946年にオーストリアのハインツ・ローレンツェンと、ドイツのセット・ラインドルによっ
て競技として紹介されたのが、始まりといわれています。
日本では、1982年に東京都立文京盲学校にてゴールボールが紹介されましたが、全国的な普及には及ばず、1992年に日本身体障害者スポーツ協会
(現:日本パラスポーツ協会)によって、ゴールボールの競技規則の翻訳と紹介がされたのを機に、競技者の育成にも取り組まれるようになりました。2004年のアテネパラリンピックでは女子チームが
初出場にも関わらず、銅メダルを獲得。さらに、2012年のロンドンパラリンピックでは女子金メダル。2021年の東京パラリンピックでは女子銅メダルと、日本での歴史は浅いにも関わらず、世界大会で
好成績を残してきました。
2 見えないのに どうしてボールの位置が分かるの?
ゴールボールは、選手の視野や視力などの障害の程度に差が出ないように、アイシェードと呼ばれる目隠しをつけて行います。もちろん周りは一切見えなくなります。
それなのになぜ、選手はボールを止めたりできるのでしょうか。その秘密はボールにあります。
ゴールボールに使うボールは、7号のバスケットボールとほぼ同じ大きさですが、
重さは1.25kgと、バスケットボールの約2倍もあります。中に鈴が入っているため、転がると音が鳴ります。その音を頼りに、選手たちはボールの位置を把握しているのです。
視覚以外のすべての感覚を研ぎ澄ませ、ボールの音、味方の声に集中し、プレーを行います。そのため、競技中に声援や音のなる応援は一切禁止ですが、ゲームが止まっている時
(ゴールが決まった瞬間、タイムアウト、選手交代など)は、歓声や音の出る応援ができます。
3 ゴールボールのルール
1チームの人数は、コートに入る3人と控え選手3人の計6人で構成されます。試合に使用するコートは6人制バレーボールと同じ広 さがあり、サッカーゴールのような低く奥行きがあるゴールを設置。コート内は以下のようにエリア分けされ、すべてのラインには幅 5cmのテープの下に太さ3mmの紐が入れられ、その凸凹によって、選手は位置や方向が把握できます。
競技時間は前半・後半各12分、3分間のハーフタイムが設けられています。前後半終了時に同点の場合、3分間の延長戦となり、どちらかが得点を決めた時点で終了。
延長戦でも勝敗がつかない場合は、PK戦のように1対1で投げ合う「エクストラスロー」がベンチに入っている選手で行われます。
ボールを投げる際は、攻撃側のチームエリアに最低1回とニュートラルエリアに最低1回と両方でバウンドさせなければいけません。
また、ペナルティーは、チームエリアの外で守備をする、守備で最初にボールを触れてから10秒以内にボールがセンターラインを超
えない、レフェリーの許可なくアイシェードに触れる、攻撃側が投球動作に入ってから守備側に不利な音を出す、ボールインプレー
中にベンチから指示を出すなどがあります。ペナルティーは、それを課せられた選手が一人でゴールを守らなければなりません。また、
チームペナルティーで対象の個人が特定できなかった場合は、ペナルティーを課す選手を相手チームが指名できます。
4 観戦するときは静かに
音と感覚を頼りにプレーを行うため、観客は音を立ててはいけません。歓声を上げてもいいのはゴールが決まった時、タイムアウト、選手交代などのゲームが中断されている時だけ。プレー中に
音を出してしまった場合、ゴールしたとしてもノーカウントになってしまいます。
試合中は、選手同士の駆け引きがあります。例えば、ボールを持たない選手が足音を立ててフェイントしたり、バウンドの高低差を利用したり、
助走の反対側に向かってボールを投げるなどのテクニックを駆使して得点を狙っていく様子も、観戦の楽しみでもあります。
協力: 一般社団法人日本ゴールボール協会
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