かまぼこ
「かまぼこ」と聞くと、板に載っている紅白の板かまぼこを連想する人が多いと思いますが、実は、魚肉を原料とした魚肉練り製品はすべて「かまぼこ」。さつまあげ、はんぺん、つみれ、伊達巻なども、全部、かまぼこの仲間です。魚のおいしさと良質のたんぱく質をそのまま凝縮し、そのままで食べられる日本独特の元祖ファーストフードである、かまぼこについて今回はご紹介します。
1.かまぼこの歴史と語源
かまぼこがわが国の歴史に初めて登場するのは、平安時代の1115年です。当時の古文書に祝いの宴会料理のスケッチがあり、その中にかまぼこが記録されています。実際には、これよりも昔から棒の先に魚肉のすり身を付けて焼いて食べていたようです。この頃のかまぼこは、ちくわに近いものでした。この形が植物の「蒲の穂」に似ていて、蒲の穂は鉾のような形だったことから「がまのほこ」→「かまぼこ」と呼ばれるようになりました。
2.原料魚
かまぼこといえば、しこしこっとした歯ごたえがたまらない魅力です。あの弾力性を”アシ”といいますが、かまぼこの原料には、味の良さに加えて加熱すると良いアシが出る魚が使われます。といっても、この二つの条件を兼ね備えた魚は少なく、一般には数種類の魚を組み合わせ、それぞれの長所を生かしてつくられます。また地方ごとに近海で獲れる魚を利用して、その土地独特のかまぼこをつくっています。いろいろ食べくらべてみると、それぞれお国自慢の味が楽しめるはずです。
このように、かまぼこにはいろいろな魚が使われますが、代表的なものは、エソ、グチ、ハモ、トビウオ、アジ、タチウオ、ヒラメなどです。また、北洋で獲れるスケトウダラは、冷凍すり身として広く使われています。
最近は赤身魚も人気です。また、近年イワシやサバの栄養が注目され、それらを原料にしていろいろな種類の赤身魚かまぼこ(くろぼこ)がつくられています。
3.製造方法
かまぼこの製造方法は、
- 原料を厳選する→新鮮な魚を選びます。
- 魚肉だけを採り出します→頭、内臓などを取って水洗いし、魚肉だけを採り出します。
- 魚肉を水でさらします→採り出した魚肉をよく水にさらして不用なものを取り除いた後、脱水します。
- 魚肉をミンチにします→脱水した魚肉をミンチにします。これを砂糖などを加えてよくまぜあわせ、冷凍したものを冷凍すり身といいます。
- ミンチした魚肉を練ります→ミンチした魚肉に食塩や調味料などを加えてよく練り上げます。
- 加熱方法によって各種のかまぼこになります
練った魚肉を整形し、加熱しますが、その方法によっていろいろなかまぼこが、出来上がります。
4.加熱方法とかまぼこの種類
- 蒸す … 蒸し板かまぼこ、焼板かまぼこ(蒸板かまぼこの表面を焼く)、す巻きなど。
- 焼く … 焼抜きかまぼこ、焼ちくわ、笹かまぼこ、伊達巻など。
- 揚げる … 揚げかまぼこ(関東ではさつまあげ、関西ではてんぷら、鹿児島ではつけあげなどと呼ばれています)
- ゆでる … はんぺん、なると、つみれ、すじなど。
5.カニ風味かまぼこの出現
いわゆる“カニかま”が市場に登場するのは昭和40年代の末からです。最初の製品は一見カニでしたが、食べてみるとかまぼこそのものでした。色をつけ、香料を入れた程度のものでした。昭和50年代に入ると、まず“刻み”タイプが、ついで、風味、食感、ともに本物のカニと見紛うような “センイ状”の製品が登場します。
消費者は食べたいが高くて手が出ない、このような状況のなかで、イミテーションとはいえ、限りなく本物に近く、しかも値段が安い、カニ風味かまぼこが消費者の目にとまりました。海外でも特に米国で需要が高まり、昭和56、57年を契機に急上昇、これに伴って生産量は急カーブを描きました。
日本のかまぼこから世界のかまぼこへ。新しいタイプのかまぼこ、つまり、珍味かまぼこ時代への端緒となったこと、それに即応して技術の高度化が進められたこと、これは画期的なことです。
6.かまぼこの栄養
かまぼこには、卵と肩を並べるほどたん白質がたっぷりです。しかも、魚のたん白質ですからとっても良質です。近頃塩分の問題が挙げられていますが、 かまぼこは高たん白質食品であるため、 高血圧の心配はないという実験結果が出ています。
また、日本人に不足しがちといわれるカルシウムも、つみれや揚げかまぼこは特に豊富。もうひとつうれしいことに、低カロリー、低脂肪。
日本では戦後食生活が欧米化し、そのせいか成人病や肥満がいろいろ問題になっていますが、日本独特のヘルシーフードかまぼこが大いに見直されています。
協力:全国蒲鉾水産加工業協同組合連合会
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