地中海食
平成25年に「和食」が国連教育科学文化機関（ユネスコ）によって、世界無形文化遺産に認定されたことをご記憶の方も多いと思います。
その3年前の平成22年には「地中海食」が世界無形文化遺産に登録されました。近年、健康によいと話題の「地中海食」とは、どのような食事でしょうか。
１．地中海食とは
地中海食とは、イタリア、ギリシャ、スペインなど地中海沿岸の国々の伝統ある食文化のことで、以下のような特色があります。
- 糖質は全粒穀物※、パスタなど低グライセミックインデックス（食後血糖値の上昇度が低い）の食品でとる。
- 獣肉が少なく、魚介類が多い。
- 適量のナチュラルチーズ、ヨーグルトをとる。
- 緑黄色野菜、豆類が多く食物繊維が豊富にとれる。
- 油脂としてオリーブオイルを用いることにより各食材を生かし、また、バランスのよい脂質のとり方となっている。
- 食材は和食との類似点が多く、日本人にもなじみやすい。
- 食材は自然食品が多く、また、丸ごと使う全体食である。
- 調理法が簡潔である→調理に時間がかからない。
- 香り高いハーブとオリーブオイルを巧みに使うことにより満足感をもたらす。そのため塩分がおのずと控えられる。
- 適量のワインを傾けながら時間をかけてゆっくり食事を楽しみ、コミュニケーションを形成する食生活スタイルである。
- 全粒穀物とは
精白などの処理で糠となる果皮、種皮、胚などを除去しない穀物や、その穀物を使用した製品。玄米や、全粒穀物を使ったパン、パスタなどがある。精白したものより食物繊維やビタミンB１、鉄分などのミネラルが多く栄養価に富む。
２．地中海食が脚光を浴びるようになったきっかけ
地中海食に医学的な関心が集まりはじめたのは1950年代までさかのぼります。当時、米国や北欧の人々の間に、心筋梗塞など裕福であるための病気による死亡者が目立ち始めており。それが肉や乳製品など動物性脂肪を摂取しすぎた結果ということに気づきました。それにもかかわらず、米国や北欧の多くの人々は、穀類や豆、野菜を多くとり、オリーブ油を油脂として使う地中海沿岸地域の食生活を、経済的に貧しいがためのものと認識し続けていました。
大きな注目を集めるきっかけとなったのは、南イタリアの田舎で生活をした経験を持つ米国ミネソタ大学の疫学のアンセル・キース教授が、1975年、南イタリア料理の素晴らしさをまとめた本を出版したことによります。肉や動物性脂肪を多量に摂取する危険性を説き、健康食としての南イタリア料理を賛美したこの本は栄養学者の間でも注目を集めました。地中海型食事法（地中海食）という言葉が使われるようになったのは、この本からです。また、キース教授は日本、米国、フィンランド、オランダ、イタリア、旧ユーゴスラビア、ギリシャの7カ国で行った調査で、高脂肪食を食べているにもかかわらず、動物性脂肪の摂取量が少なく、オリーブ油の摂取量が多い地中海沿岸諸国では、米国や北欧に比べ、血中コレステロール値が低く、動脈硬化による狭心症や心筋梗塞などが少ないことを報告し、地中海食が注目されるようになりました。
３．地中海食が健康によいといわれる理由
地中海食が健康によい理由は、豊富に使用するオリーブオイルや魚介類がＬＤＬコレステロール（いわゆる悪玉コレステロール）値を下げる効果がある不飽和脂肪酸を多く含んでいること、飽和脂肪酸を多く含む肉の摂取量が少ないこと、野菜や果物などの植物性の食品を多く摂取するために抗酸化作用が強いことなどがあげられます。
また、地中海食では、主食として全粒穀物やパスタなどがよく食べられます。これらは、他の穀物に比べて食後の血糖値の上昇が穏やかなため、糖尿病の予防や改善にも適しています。
オリーブオイルには、緑黄色野菜や豆類、全粒穀物と相性がよいという性質があります。一般的に、植物油の多くは種子に化学的な処理を加えて抽出しますが、オリーブオイルは、オリーブの実を皮や種ごと搾るため、ビタミンEやポリフェノールだけでなく自然の風味がそのまま残っています。このオリーブオイルとハーブをうまく使うことで、食べにくいといわれる玄米などの全粒穀物や豆類も、砂糖や食塩などを使わずにおいしく食べることができるのです。
乳製品をナチュラルチーズやヨーグルトといった発酵食品で取ることも地中海食の特徴です。これらには乳酸菌やビフィズス菌が多く含まれ、腸内細菌のバランスを整える作用があります。
最近ではアルツハイマー病予防にも地中海食が優れているという研究も発表されています。実際に、伝統的な地中海食をとっている地域はアルツハイマー病が少ないといわれています。食事に含まれる成分もさることながら、ゆっくりワインを傾け、コミュニケーションをとりながらの食生活スタイルも、アルツハイマー病予防につながっていると思われます。
このように優れた特色が多い地中海食を普段の食事に取り入れて、楽しく健康でおいしい食生活をしてみませんか。
協力：一般社団法人 日本オリーブ協会
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ＨＰ：http://www.japan-olive.or.jp