タマネギ
「タマネギ」は、平成18年の全国の野菜の生産量でジャガイモ、ダイコン、キャベツに次ぐ第四位。主な産地の北海道では春まき秋どり、関西・九州では秋まき初夏どりが中心です。さらに、貯蔵しやすいことから、一年中市場に出回っています。そんな身近な野菜の一つ「タマネギ」について紹介します。
1. タマネギの歴史
タマネギは古代から栽培され、エジプトではピラミッドを建設する労働者に食べさせていたとか、建設の報酬として支払われていたという説があります。タマネギを食べる話は、旧約聖書や千夜一夜物語にも記されています。中世ヨーロッパでは、ニンニクと並んで魔よけとされました。14世紀にペストが流行した際、タマネギやニンニクによって伝染を免れた、ということからヨーロッパ全域に広まったといわれています。日本へは、江戸時代に南蛮船によって伝わったといわれています。本格的に栽培されるようになったのは、アメリカから渡来した品種の栽培に成功した明治時代以降のことです。
2. 食べているところはどこ?
わたしたちが食べているところは、実はタマネギの葉の部分なのです。葉の下の葉鞘(ようしょう)と呼ばれるところが茎を抱き包むように成長して厚みが増し、それが重なり合って玉になるのです。この部分を1枚ずつはがすと魚のうろこのようなので、鱗茎(りんけい)といいます。タマネギの品種によって異なりますが、日の長さが適した時間数に達し、温度が上がると徐々に膨らみます。
3. 日持ちの秘密
タマネギは玉が成熟して、地上部分の葉が枯れた後で、育成に適した条件であっても1か月から3か月ほど発芽しない性質があります。これを「休眠」と呼んでいます。
普段目にするタマネギは、収穫後日持ちを良くするためにつるして乾燥させます。1か月から数か月つるすと、皮の色は黄色になります。タマネギの産地では、専用の「タマネギ小屋」や家の軒先で、タマネギをつり下げて乾燥している光景(つり玉)を目にすることができます。一方、新タマネギは、風味(水分)を保つため、乾燥させないので薄皮に覆われて色が白いのです。
4. タマネギの辛み成分
タマネギの辛みは硫化アリルという硫黄を含む成分です。タマネギを切ると空気にふれて、この硫化アリルが催涙性物質に変化して涙が出るのです。辛タマネギは硫化アリルを多く含み、甘タマネギは少ししか含みません。主に北海道で生産されるタマネギは、辛タマネギです。一方、主に本州や九州で生産されるタマネギは甘みがあります。また、南ヨーロッパ生まれの赤(紫)のタマネギも、辛みが少なくサラダなど生食に適しています。
ちなみに、タマネギやニンニクなどのネギ類は人が食べても無害なのですが、イヌやネコなどの動物が食べた場合、硫化アリルによって中毒を引き起こし、貧血状態になってしまいます。誤ってペットなどの動物に与えないように注意しましょう。
協力 : 独立行政法人農畜産業振興機構
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