「桃の花」は春の季語で、「桃の実」は秋の季語です。果物の中で、桃は古くから季節を表す言葉として登場する代表格の一つでもあります。平安時代の「上巳の節句」が後に「桃の節句」となりました。今回は、古くから人々の身近にあった桃についての豆知識をお届けします。

1. 歴史

中国大陸南部の高原地帯が原産地といわれ、野生種を改良した品種が紀元前から栽培されていました。ヨーロッパ大陸へは紀元前1世紀ごろにペルシャを経由して伝えられ、その後、世界各地で広く栽培されるようになりました。日本へは弥生時代に中国大陸から伝えられ、当時は厄除け・薬・花木として栽培されていたようです。そして、ひな祭りには邪気を払い不老長寿を授かる意味で桃の花を飾るようになったようです。
桃の本格的な栽培が始まったのは明治時代だといわれています。明治32年に大久保重五郎氏が新種の「白桃」を発見したのをはじめ、優良品種が神奈川や岡山で発見され、多くの品種が生まれました。

2. 季節と桃

古代中国で考案された季節を表す方式の一つに七十二候というのがありますが、桃の花が咲き始めるということで、中国では「桃始華」、日本では「桃始笑」と呼ばれます。それぞれ「啓蟄」(二十四節気)の初候と次候にあたります。
桃の花は桜と違い花柄(かへい:花を支える茎)が短く、梅の花と同じように枝から直接花が咲くように見えます。桃も梅も桜より早く咲き、里に春の訪れを告げてくれます。草木が萌えたつ前に、桃の花が満開となれば、まさしく「桃源郷」を思わせる風景かもしれませんね。

3. 種類

桃にもたくさんの種類・品種がありますが、日本国内で多く出回っているものを紹介します。

  • 白鳳:市場の主流を占めています。赤味がかった皮と白い果肉、果汁がたっぷりで甘みが強く、日持ちがします。
  • 白桃:中国の水蜜桃を改良し、岡山県で生まれた日本独自の桃です。皮・果肉ともに白っぽくて上品な甘さが特徴です。
  • ネクタリン:実は小さく皮には毛がなくツヤツヤと光沢があります。ギリシャ神話の神々の美酒「ネクター」から名前がつけられました。ジュースにも適しています。
  • 黄桃:黄色い果肉で熟してもあまり柔らかくならず、あまり甘くないため、主に缶詰に使われてきました。しかし近年は甘味の多い美味しいものが多くなっています。

4. 葉・種

桃は食べるだけではありません。桃の葉には薬理作用(あせもや湿疹に効果的)があり、江戸時代には夏の土用の日に「桃湯」に入る習慣がありました。生の葉か陰干しにした葉を細かくきざみ、布袋に入れて湯船につけてみてはいかがでしょうか。また、桃の種を割ってみると、中に数個の種がでてきます。これは「桃仁」と呼ばれるもので血液の循環をよくする作用があり婦人病の漢方薬として使われています。

5. 選び方

桃は6月から9月初旬ころに出回ります。おいしい桃が出回るのは、品種や産地によって違いがありますが、梅雨が明ける7月中旬ごろから8月下旬ごろに多くなります。形は左右対称で押し傷がなく、形がよく、色がさえ(赤く色づく桃は赤がさえ、白い桃は白がさえたもの)、香りがよく、果皮全体にうぶ毛があるものがおいしいようです。

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