のり(海苔)
なぜ「のり」というのでしょうか。摘みとられた時は他の海藻と同じく「ぬるぬる」としています。この「ぬるぬる」が転じて「のり」となったといわれています。平安時代には「紫菜」と書いて「のり」と読んでいましたが、江戸時代になって「海苔」という漢字が使われるようになったようです。今回はのりについての豆知識を紹介します。
1. 歴史
のりは古代から日本人に好まれている伝統的な食品です。歴史に現れるのりの初めの記述は、奈良時代の歴史書「常陸国風土記」の中に「ヤマトタケルノミコトが霞ヶ浦の静かな浜辺に干してあるのりの美しい光景に目を奪われた」と記されています。また、日本で最初の法律書である大宝律令では調(現在での税)として約30種類の海藻が挙げられており、その中でのりは高級品だったといわれていました。当時ののりは現在のような四角いのりではなく、海から摘みとった生のりでした。また、大宝律令は2月6日(新暦)に施行されたため、昭和42年にその日を「海苔の日」と定めました。
江戸時代になると、天然のものをとることから養殖技術が確立し、浅草和紙の製紙技術を用いることにより四角い板のりが登場します。さらに、さまざまな具を芯にしてごはんを巻くのり巻きが庶民の間で食べられるようになりました。また、本格的な養殖が始まったのは第二次世界大戦後にイギリスの海藻学者(キャサリン・メアリー・ドリュー博士)がノリの生態系を解明し、人工的な種付けをするようになってからです。有明海沿岸の熊本県宇土市にはドリュー博士の顕彰碑が建てられています。
2. 産地
わが国の主要生産地は九州有明海、瀬戸内海沿岸、兵庫・播磨灘沿岸、愛知県、三重県、千葉県、宮城県です。日本海側は波が荒いため、養殖に向いていません。
また、海外では韓国、中国、イギリス、ニュージーランドで生産されています。韓国のりはゴマ油と塩を使った味付けのりですが、見た目が日本ののりと比べて穴が多く、薄いのが特徴です。イギリスではウェールズ地方南部で「Laver」と呼ばれるものがあり、ペースト状にしたものをパンに塗って食べる習慣があります。
3. 「海藻 」と「海草 」の違い
「海藻」と「海草」は読み方が同じで混同しやすいですが、一般的に食べられているのは「海藻」(ワカメ、コンブ、ノリ、ヒジキ)で、食べられる「海草」はほとんどありません。大きな違いは繁殖する際に花は咲かず、胞子によるものが海藻で、花を咲かせ種子によるものが海草です。
4. 養殖法による違い
産地による養殖法の違いによって性質が異なりますので品質の良しあしは一概に語れません。九州有明海での「支柱式養殖法(浅い海に支柱を建てて海苔網をはります)」ではうまみのある味となり、厚さは薄手で歯切れがよく柔らかくなります。瀬戸内海沿岸での「浮き流し式養殖法(海の深いところに浮きオモリでロープのいかだを作りその下に海苔網をはります)」では淡泊な味となり、厚さはやや厚くなり硬くなります。
5. 栄養
のりは海の緑黄色野菜といわれるほど栄養価の高い食品です。のりのビタミンCは熱に強く、焼いても栄養素が壊れない特徴があります。また、のりの約3分の1は食物繊維であり、疲労回復に役立つビタミンB1・B2、貧血予防に役立つ鉄分、骨粗しょう症予防やいらいらを解消するカルシウムが含まれています。
協力:全国海苔貝類漁業協同組合連合会
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ホームページ:http://www.zennori.or.jp/