しょうゆ(醤油)
和食はもちろん、多くの料理に使用されているしょうゆ。下ごしらえに、調理に、仕上げに、しょうゆをちょっと加えるだけで、料理がグンとおいしくなります。そこには、確かな科学的根拠があり、昔から伝わる調理法がすべて理にかなったものだということに驚かされます。
1. 主な効果は6通り
- 消臭効果
しょうゆをつけて刺身を食べるのは、味だけでなく生臭みを消す大きな働きがあるからです。日本料理の下ごしらえにある「しょうゆ洗い」は、この効果を利用して、魚や肉の臭みを消しているのです。 - 加熱効果
蒲焼きや焼き鳥などの食欲をそそる香りは、しょうゆの中のアミノ酸と砂糖やミリンなどの糖分が加熱によりアミノカルボニル反応を起こし、メラノイジンという芳香物質ができるためです。アミノカルボニル反応は、美しい照りを出す働きもします。しょうゆの色と香りを生かした照り焼きなどは、まさにこの反応を利用したものです。 - 静菌効果
しょうゆには、適度な塩分やアルコール、有機酸などが含まれているため、大腸菌などの増殖を止めたり、死滅させる効果があります。しょうゆ漬や佃煮などは、この効果を利用して、日持ちをよくしています。 - 対比効果
例えば、甘い煮豆の仕上げに少量のしょうゆを加えると甘味がいっそう引き立ちます。このように、一方の味が強く、他方の味がごくわずかな場合、主体の味がより強く感じられるのが対比効果です。おしるこや餡の仕上げに塩をひとつまみ入れるのと同じ効果です。 - 抑制効果
漬かり過ぎた漬物や塩鮭など、塩辛いものにしょうゆをたらすと、塩辛さが抑えられることがあります。これはしょうゆの中に含まれる有機酸類に、塩味を和らげる力があるためです。このように、混ぜたときに一方あるいは両方の味が弱められることを抑制効果といいます。 - 相乗効果
しょうゆの中のグルタミン酸と、かつお節の中のイノシン酸が働き合うと、深い旨味がつくり出されます。このように混ぜ合わせることにより、両方の味がともに非常に強められることを味の相乗効果と呼びます。そばつゆや天つゆなどが、このよい例です。
2. おいしさの秘密
しょうゆのおいしさは、醸造過程における3種類の微生物の働きによってつくられています。まず、「麹菌」は、いろいろな酵素をつくり出し、原料である大豆のたんぱく質をぺプチドやアミノ酸に分解、小麦に由来するでんぷんをブドウ糖に分解します。こうしてつくられた基本的な成分を乳酸や酢酸などの別の成分に変えるのが「乳酸菌」です。しょうゆの味に深みを与えます。最後に登場する「酵母」は、糖分やアミノ酸からアルコールやいろいろな芳香成分をつくるものです。しょうゆらしい香りはこれによって醸し出されます。
本醸造しょうゆに含まれる香りの成分は、現在発見されているものだけでも300種類以上あります。これらは、特定の香りが目立ち過ぎることなく、全体に調和してしょうゆの独特な香りをつくり出しています。
なお、気になる塩分は、通常こいくちしょうゆは約16%、うすくちが約18%です。
3. 種類
日本農林規格(JAS規格)では、「こいくち」「うすくち」「さいしこみ」「たまり」「しろ」の5種類に分類しています。また、減塩食を必要とする人、塩分の取り過ぎが気になる人など健康志向から減塩しょうゆ・低塩しょうゆを使う人が増えています。それぞれ食塩の低減割合によって呼び名が違います。「減塩しょうゆ」は通常のしょうゆの50%以下(食塩9%)、「低塩しょうゆ」は80%以下(食塩13%)です。「減塩しょうゆ」と一般のしょうゆのちょうど真ん中くらいの塩分のものが「低塩」です(うす塩しょうゆ、あま塩しょうゆ、あさ塩しょうゆという名前のしょうゆも同じです)。減塩しょうゆは通常のしょうゆを製造後、塩分だけを特殊な方法で取り除き、旨味、香りなど、他の成分はそのまま残してつくります。
4. ルーツ
しょうゆの原形は、今から3000年以上も前の中国の「醤(じゃん)」に始まります。これはもともと原料を塩漬けにして保存したことから始まり、紀元前700年ごろに中国の法律の中に「醤(ひしお)」の文字が見られます。これがいつ日本に伝わったかは定かではありませんが、西暦500年代の前半に中国から伝わったといわれています。
現在、しょうゆは万能調味料として世界中に愛され、日本食ブームとつながって、世界の食卓に並ぶようになりました。
協力:しょうゆ情報センター(SOYIC)
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