漬物
ごはんのお供に、時にはお酒のツマミとしても親しまれている漬物。漬物は塩分が高いイメージがありますが、実はそうではありません。およそ20年前と比べて、市販の漬物は使用する塩分が大輻に少なくなっているのです。 その理由は、健康志向の高まりにより、塩分の取り過ぎは悪者扱いされることが原因です。白菜やたくあんは約2%塩分が減るなど、低塩化が進んでいます。食欲増進をはじめ、健康にも良いとされる漬物を紹介します。
1 漬物は中国発祥?
中国では多種類の野菜が、かなり古くから食べられていたことが明らかになっています。当時の人々は野菜が多く収穫された時に食塩で野菜を漬け保存。
これが漬物の起源といわれています。中国で最も古い詩集とされる「詩経」の中に、野菜の塩漬に関する歌も書かれています。
一般的に、記録よりも実際に行われていた事実の方が古いことを考えると、中国において食塩で漬ける漬物は少なくとも「詩経」よりも早い時期にあったことになり、
したがって、中国での漬物の出現は約3千年以上前であったと考えられます。
日本では奈良時代後期に編纂されたという万葉集の中に「藻塩焼」の記述があり、海藻を乾燥させて焼くことで灰の混じった「藻塩」が作られ、
これを漬物製造に使ったことが想像されます。また、「藻塩」を使わなくても、野菜を海水に浸けて干すことを繰り返せば、塩がなくても保存性のある塩漬の漬物ができます。
平安時代に入ると、漬物も多彩に。平安初期の宮中儀式や年中行事を知る上で重要な「延喜式」という資料には、儀式の宴などに使われた多くの漬物の名前
(「塩漬」、「醤漬(ひしおづけ)」、「糟漬(かすづけ)」、「薤(にらぎ)」、「須々保利(すずほり)」等)が記され、多種類の漬物が供されていたことが分かります。
江戸時代には漬物の種類も多くなり、現在のものとほぼ同じようなものが作られるようになります。多くの商人が江戸に集まり、それに伴って漬物の調味や作り方に工夫を凝らしていきます。
戦国時代まではほとんどが玄米食だったのが、江戸時代には、食生活も贅沢で町民も白米を食べるように。ところが、白米を食べるようになったことで、
ぬか(玄米には多く含まれている。)に含まれるビタミンB1不足による「江戸患い(脚気)」が流行し、その後、ぬかみそ漬けを食べると病が治ったことから、
ぬが漬けが多く作られるようになります。
江戸時代以降、第二次世界大戦末頃までの漬物は、梅干しやたくあん、べったら漬けが一般的で、戦後の家庭環境や家族構成の変化に伴って、市販品も増えていきました。
そして塩分を抑えた低塩の漬物の製造法も開発され、野菜の風味を感じられる浅漬けなども登場してきました。
2 漬物は健康維持にも大活躍
塩分の取り過ぎは身体によくないといわれますが、夏場は熱中症予防に塩分を取るようにいわれるほど、塩分は大切です。
塩分不足になると、体内の塩分濃度を調整しようと水分を排出するために引き起こされる「脱水症状」やそれに伴う「筋肉異常」があります。
さらに塩分が不足すると体内の塩分濃度を調整するため水分量を減少させ、それに伴って血流量も減少。その結果、脳への酸素供給が減少して、
「めまい」や「ふらつき」を起こすこともあります。また、水分量を補うために大量の水分を補給し、塩分濃度が急激に低下すると、
神経伝達が正常に行われなくなり、「精神錯乱」等を引き起こすことがあります。
漬物には食物繊維、カリウム等のミネラル、ビタミン、乳酸菌、有機酸、カプサイシン・アリシン等の機能性物質が含まれています。
このうち食物繊維は、心筋梗塞等の予防に役立つといわれ、同じ野菜でも漬物にすると、食物繊維の含有量が増大します。
ビタミンB1は不足すると食欲不振や疲労、だるさ等の症状が現れることがあり、食物繊維と同様に、漬物に加工することで、ビタミンB1の含有量が増大します。
カリウムは摂取することで体内の塩分の排出を促す働きがあり、カリウムが多く含まれる食品の中に漬物が多くあります。
漬物の原料となることが多い、ダイコン、ハクサイ、カブ、野沢菜、高菜等のアブラナ科の野菜に含まれる、抗酸化性ビタミンは、ガン予防効果があるといわれています。
さらに乳酸薗には植物性乳酸菌と動物性乳酸菌があり漬物には植物性乳酸菌が多く含まれています。これは高塩分、低pH(酸性)等の過酷な環境下でも生存でき、胃酸に対して抵抗力があるため、動物性乳酸菌よりも胃での生存率が高く、腸管にまで到達し、生き残る数も多いといわれ、動物性乳酸菌よりも酸に対する抵抗性は10倍程といわれています。乳酸菌は、整腸作用や免疫活性作用があるといわれ、植物性乳酸菌でも同様の作用のあることが知られています。
3 自宅でも手軽に漬けられる
現在では、浅漬けの素や野菜漬け専用の酢、ぬか床のパックなど、市販品が多くあります。お好みの野菜を洗い、しっかり水気を取って漬けるだけで、誰でも失敗なく簡単に、
美味しい漬物が自宅で作れます。白菜やきゅうり、なすなどの漬物の定番の野菜だけでなく、トマトやパプリカなど色鮮やかな野菜を使うと、食卓の彩りも鮮やかになります。
旬の野菜を使うと季節を感じられる食卓にもなります。
これからの健康維持にも、漬物を役立ててはどうでしょうか。
協力: 全日本漬物協同組合連合会
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