綱引き

綱引き

綱引きは誰もが学校の運動会などで経験していることでしょう。団体戦であること、ルールが単純明快であることにより、世界的にも広く親しまれています。今回は、身近な競技であるそんな「綱引き」についてご紹介します。

1.起源

「綱を引く」ということは、世界各地で古代より儀式と信仰から始まり、豊作を祈る行事、争いごとを鎮める手段、領土を獲得するためのものなど、さまざまな形態として見ることができます。
日本での「綱引き」の歴史も古く、五穀豊穣ごこくほうじょうや吉凶を占う儀式として各地で行われており、現在も日本の各地で伝統行事としてさまざまな形の綱引きが行われています。有名な綱引きとしては、秋田県「刈和野の大綱引き」「大曲の大綱引き」、沖縄県「与那原の大綱曳」など、いずれも豊作、豊漁を占う催事として行われています。神話の世界にも「綱引き」は登場し、出雲風土記の「国引き」伝説などよく知られています。日本で競技として行われたものとしては、飛鳥、奈良時代の蹴鞠けまり打毬だきゅう投壷とうこといった貴族の遊戯に端を発するとのことです。鎌倉、室町時代に入って庶民の遊戯が盛んになり、首引き、指引き、腕押しなどとともに遊戯として「綱引き」が行われるようになりました。この様子は、室町時代の作品「洛中洛外図」や、名古屋城の襖絵ふすまえなどにその情景が描かれ、庶民の遊戯として親しまれていたものと思われます。
日本の「綱引き」は、明治以降国内各地で行われるようになった運動会の普及とともに、体育的行事の種目として現在まで広く行われています。明治13年には明治天皇が、吹上御所で近衛兵による「綱引き」をご覧になったということが、明治天皇行幸年表に記録されているとのことです。

2. 運動競技としての綱引き

現在では、綱引きは儀式とは関係なく純粋な運動競技としても発展していますが、綱引きが競技として行われたのは、紀元前2500年もの昔にさかのぼり、エジプトのサッカラの古墳の壁に彫られているものが発見されています。 紀元前500年ごろにはギリシャでほかのスポーツのための体力訓練として、また競技スポーツとして行われていました。近代オリンピックが始まった時、アスレチック競技(陸上競技)の種目に綱引競技が含まれ、1900年の第2回パリ大会から1920年の第7回アントワープ大会まで行われていました。
ヨーロッパを中心に綱引競技はその後も盛んに行われ、1960年に国際綱引連盟(TWIF)が設立され、統一されたルールのもとに国際大会が開催されるようになりました。ワールドゲームズでも第1回大会から正式種目として採用され、2002年に国際綱引連盟が国際オリンピック委員会(IOC)に正式加盟したことから、オリンピック競技復活への期待が高まっています。

3.綱引競技のルール

1チームの編成は、選手8~10人、監督1人、トレーナー1人です。競技は8人の選手で行いますが、選手が10人に満たない場合は、監督、トレーナーは選手を兼ねることができます。チーム8人の合計体重による体重別クラスで実施されます。
"Pick up the Rope"(ピックアップ ザ ロープ)の合図で選手はロープを持ち、"Take the Strain"(テイク ザ ストレイン)で綱引きの体勢に入り、"Steady"(ステディ) "Pull"(プル)で試合が始まります。
足以外の身体の部分が床と接触したり、床に座りこんだり、寝転んだりしたら反則です。
チームの最後部に位置する選手はアンカーと呼ばれ、身体にロープを巻いたような持ち方をします。
インドア競技の場合、競技レーンには3本の線が引かれます。真ん中を「センターライン」、その2メール離れた位置に引かれた線を「ホワイトライン」といいます。一方、ロープにも3か所の目印があり、ロープの中心にセンターマーク、2メートル離れた位置にホワイトマークがあります。ホワイトラインとホワイトマークが重なる位置まで引きこむことで勝敗を競います。

4. 掛け声「オーエス」

「オーエス」の掛け声は、ポルトガル語とかスペイン語だったという説や、最近ではフランス語の「オーイス(Oh, hisse)」に由来するという説がありますが、その由来についての明確な証拠はありません。【「hisse」:(帆や旗などを)揚げる・巻きあげる】

5. 綱引きの魅力

綱引きは、体力に優れている方が勝つように思われますが、テクニック、チームワークにより体力に劣っている方も多分に勝つことがある競技です。綱引きは、パワー、体力、テクニック、戦略、チームワーク、そして忍耐力などの精神面が重要な要素の競技であり、競技としての奥深さが存在します。それが魅力のひとつになっています。

協力:公益社団法人日本綱引連盟
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