梅干し
さわやかな酸味が特徴で、おにぎりやお弁当などに入れられていることが多い梅干し。今回は、その「梅干し」に関する豆知識を紹介します。
1. 梅干しの歴史
梅は中国原産で、日本への伝来は、奈良時代以前にさかのぼります。奈良時代には貴族が梅の花を観賞し、和歌にも多く詠まれました。梅の実は菓子(果物)として食べられていたようです。
また、梅は薬としても使用されていたようです。平安時代には、日本現存最古の医学書である「医心方」には、梅干しの効能についての記述があります。
さらに、村上天皇が疫病を梅干しと昆布のお茶で治したという伝承が残されています。そのときの梅が申(さる)年に収穫したものであったとのことから、「申の梅」として重宝され、縁起物としても扱われるようになりました。当時の梅干しは、現在のものとは違い、中国から伝わった「烏梅(うばい)」と呼ばれるもので、梅の実をくん製にして、真っ黒になったものでした。
その後、鎌倉時代に入ると、梅干しは武家の人々の間にも広がりました。戦国時代になると、戦場で解毒剤や栄養剤としても用いられました。
江戸時代には、現在のようなしその葉で赤く色づけする漬け方になり、一般家庭の食卓にものぼるようになったといわれています。
2. 梅干しの栄養
梅干しが健康にさまざまな効用をもたらすことは古くから知られていました。「梅はその日の難のがれ」などという言葉もあります。
梅の実に多く含まれる栄養成分として、ビタミン類ではビタミンAのもととなるβ‐カロテンやビタミンEが、ミネラルではカリウムが多く含まれます。
また、ポリフェノールやクエン酸も豊富です。ビタミンAは目に必要な成分で、カリウムは塩分の排出に役立ちます。ビタミンEやポリフェノールは細胞を傷つける「活性酸素」を消去する抗酸化作用などがあります。
クエン酸は有機酸の一種で、梅干しやレモンなどに多く含まれており、これらの酸味のもととなっている成分です。
このクエン酸は、疲れのもとになるといわれる乳酸の分解を促進し、新陳代謝を活発にして、疲労回復の効果があるといわれています。また、クエン酸には抗菌効果もあります。お弁当やおにぎりなどに梅干しを入れるのは、この効果を利用したものです。
3. ウナギと梅干しの「食い合わせ」
避けるべき「食い合わせ」の代表的な例として知られていますが、現在では科学的な根拠はなく、特にからだに悪いことはないとされています。このような言い伝えが広まった理由としては、梅干しもウナギもご飯が進むので、「食べ過ぎで胃腸を痛めないため」あるいは、「ぜいたくを戒めるため」など、諸説があります。ウナギと梅干しはともに健康によい食品として知られていますが、食べ過ぎると、それぞれ脂肪、塩分のとり過ぎにつながりますので、その点では注意が必要です。