車いすバスケットボール
今回は、2021年東京で行われた「東京2020パラリンピック競技大会」でもメダルを獲得し、大きな盛り上がりを見せた車いすバスケットボールを紹介します。 初めて車いすバスケットボールを見た人は、その激しさに驚かれることでしょう。車いす同士がぶつかり、転倒するのを見てハラハラすると同時に、スピード感にワクワ クすることでしょう。バスケットボールとルールはほとんど同じですが、車いすを操作する技術も必要になるため、バスケットボールより難しいといわれています。
1 車いすバスケットボールの歴史
バスケットボールが生まれたのは1891年。その後、第二次世界大戦が終わり、障がい者が増えた際に、アメリカで車いすバスケットボールが生まれ、
急速に普及し、1949年に全米車いすバスケットボール協会が設立。また、イギリスでは脊髄損傷者の治療法としてバスケットボールの元となったネットボールが導入され、1950年
代後半にこの二つが一つとなって、車いすバスケットボールが競技スポーツとして世界中に普及していきました。
車いすバスケットボールは当初、日常で使われている車いすが使われていました。競技として盛んになるにつれ、競技のしやすさを考えた改良が重ねられ、現在の形になりました
2 車いすバスケットボールのルール
基本的なルールはバスケットボールと同じで、1チーム5人、コートの広さやゴールの高さも同じ。得点もスリーポイントラインの外側が3点、
内側が2点、フリースローは1点と同じです。
試合時間も同じく、各ゲーム10分間、4クォーターとし、1・2クォーター(前半)の間と3・4クォーター(後半)の間には2分のインターバルが設けられます。
前半と後半のインターバルは15分間(国内大会では10分が推奨されている)とされています。
ボールは手で持ったり、膝の上に載せたりして運びますが、トラベリングもあります。車いすを手でこぐプッシュという動作は2回までで、
3回目からトラベリングとなります。
また、バスケットボールでは一度ドリブルを止めてボールを保持してから、再度ドリブルするとダブルドリブルとなってしまいますが、
車いすバスケットボールにはダブルドリブルがありません。これは、一度止まってしまうと次に動き出すのが困難で、障がいによっては向きを変えるのが難しいためです。
プッシュ2回以内でドリブルすれば、何度でもプッシュすることができます。
そして、バスケットボールとの最大の違いが「クラス分け」というもの。障がいの重い人は1点、軽い人は4.5点と、障がいの重さによってプレーヤーそれぞれに持ち点が
決められています。コートに入る5人のプレーヤーの持ち点合計が14点以内になるように選手の構成をしなければいけません。これは、障がいの軽い人ばかりでチームを組んでしまうと、
障がいの重い人が試合に出られなくなることがないよう、選手が等しく試合に出場できるようにするためです。
3 競技用車いすの特徴
競技に使われる車いすはタイヤが大きく開いたもの、正面から見るとハの字になっています。これは回転しやすさと安定感を持たせるためです。
そして、後部には転倒防止のキャスターがついています。競技中、車いす同士が激しくぶつかり合うことも多く、破損してけがをしないよう、
車いす本体は強度がありつつも軽量であることが重要となっています。
前面には足を保護するための保護用の水平バー(バンパー)がつけられており、床から高さ11cm でなければいけない。バーがついていない場合は最前面に出る部分
(フットレストなど)も床からの高さが11cm でなければいけないなど、他にも厳しい規定があります。
さらに通常の車いすにはあるブレーキがありません。競技中に止まるのも曲がるのも回転するのもすべて腕でタイヤを操作しなければいけません。
また、通常の車いすは収納しやすいよう折りたたむことができますが、車いすバスケットボールの車いすは折りたためないことも特徴です。
4 健常者も車いすバスケットボールはできる
車いすバスケットボールは足が不自由な人だけが行う競技ではありません。健常者でも参加できるスポーツなのです。2019年からは、大きな試合でも健常者が選手登録できるようになりました。
また、男女混合チームも近年増えてきています。
このように、健常者と障がい者の区別なく同じスポーツを同じように楽しめるのも車いすバスケットボールの特徴です。
車いすバスケットボール連盟(JWBF)では、「いすばすプロジェクト」と称した体験会を全国各地で行っています。車いすバスケのパラリンピアンが講師となって、競技の説明やデモンストレーショ
ンの披露、乗車体験、ミニゲームなど、車いすバスケットボールの普及と広い理解を得ることに努めています。
協力: 一般社団法人日本車いすバスケットボール連盟
住所: 〒107-0052 東京都港区赤坂1-2-2 日本財団ビル4階 日本財団パラリンピックサポートセンター内
HP: https://jwbf.gr.jp/