現在、ヨットと分類される船舶は多岐にわたります。乗員数も一人乗りから10人以上までさまざまであり、設備もラダー(舵)、セール(帆)、キール(竜骨)しかないものから、キャビン(船室)、発動機を完備したものまであります。(図1。)発動機やキャビンのない小型のヨットを「ディンギー」、発動機やキャビンのある大型のヨットを「クルーザー」と呼び分けることがあります。
「ディンギー」は、一人乗りから二人乗りのヨットで、「スナイプ級(2人乗り)」「470(ヨンナナマル)級(2人乗り)」などがあります。
スナイプ級は、1931年にアメリカで設計され、戦後日本に入ってきました。470級の名称は、艇の長さが4.7mであることに由来します。この2種類の一番大きな違いは、セールの数にあります。スナイプ級はメーンセールとジブセールの2枚のセールを持ちますが、470級はその2枚のほかに、風下に向かって走るときに張るスピンネーカー(スピン)という3枚目のセールが付いています。
また、470級は欧米人に比べて小柄な日本人に向いているといわれ、オリンピックでは、1996年第26回アトランタ大会で、女子470級で銀メダルを、男子では2004年第28回アテネ大会で銅メダルを獲得しています。
「クルーザー」は、外洋航行も可能なものもあり、小型艇といわれる全長24フィート(約8メートル)程度のものから、大型艇といわれる全長40フィート(約13メートル)以上のものもあります。
ヨット
ヨットはひとりでも運用できるため、冒険心ある人による単独での太平洋横断といったことも行われています。何千キロもの距離を風任せに無寄港で移動できるヨットは、省エネ性に優れた乗り物でもあるでしょう。風任せとなれば、向かい風であれば前に進めないのではと疑問がわきますが、今回は、そのヨットについての豆知識をお届けします。
1. ヨットの歴史
ヨットが歴史に初めて登場するのは、14世紀のオランダとされています。当初は、その高速性や俊敏さから海賊を追跡したり、偵察などに用いられるために建造された高速帆船でjaght(ヤハト)と呼ばれていました。1660年にイギリスで王政復古に成功したチャールズ2世は、オランダより寄贈されたこの乗り物を好み、Yachtと名前を改め、これが現在のYachtの語源とされています。
日本においては、1861年(文久元年)に長崎で英国人船大工が初めて建造しました。また、1882年(明治15年)に横浜の本牧で日本人により初めて建造され、神奈川の葉山で帆走したことから、葉山港には日本ヨット発祥の地と刻まれた碑が建っています。
2. ヨットの種類
3. 向かい風でも大丈夫
大丈夫といっても、まっすぐ風上へは進めません。最大45度の角度までなら進むことができるのです。
ヨットが風上に進むときには、セール(帆)を風と平行にして風を受けます。布地でできたセールは風の力で膨らみ、飛行機の翼の断面のような形になります。ここに空気が流れるとセールを挟んで空気の圧力の差が発生します。飛行機が上昇できる原理と同じ揚力です。(図2。)この揚力だけでは水の上に浮かぶヨットは横に流されてしまいます。そのためヨットの船底にキール(センターボード)と呼ぶ板状のものを取り付け、横に流される力を止めて、前に進む推進力を得るのです。
ですから、向かい風であっても風の方向の45度前方に進め、左右45度ずつ方向を変えながら、ジグザグに進めば、風上に位置する目的地に到着することができます。(図3。)
意外ですが、風を真後ろから受けて風に押されて進むより、風上45度、あるいは横風を受けて進む方が、揚力が利用できるのでスピードは速いそうです
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